最先端研究

炭化ケイ素の結晶構造について

炭化ケイ素(シリコンカーバイド、SiC)は、炭素原子のみの共有結合によって成るダイヤモンドや
ケイ素原子のみから成るシリコン結晶の正四面体構造とよく似た結晶構造ですが、ダイヤモンド
やシリコン結晶と異なる点は炭素原子とケイ素原子が1対1で交互に配列していることです。

 

すなわち、炭素原子と隣り合う格子は全てケイ素原子で、逆にケイ素原子から見れば隣接する
原子はすべて炭素原子ということになります。炭化ケイ素結晶には多形が存在しています。
もしも一方向から炭素原子(またはケイ素原子)を見た場合、その奥に存在する炭素原子(ま
たはケイ素原子)がすべて一直線上に重なって見えるものと、炭素、ケイ素、炭素の順に交互
に配列しているものがあり、複数の組み合わせが存在します。このように炭化ケイ素の結晶
構造には多形が存在していますが、結晶格子中の原子の配列パターンが異なってはいても
原子間距離や組成比は全て同じなので強度や耐摩耗性、耐食性などの材料としての特
性に違いはありません。

 

炭化ケイ素の結晶構造がダイヤモンドやシリコン結晶と同じ四面体構造で、硬度や熱伝導率
、密度などの物理的な性質はダイヤモンドとシリコン結晶の中間であるという特徴があります。
このようにダイヤモンドとシリコン結晶と似た特性を持つ理由として考えられることは、全ての結合
が共有結合から成る正四面体構造であることに加えて、結晶中の原子間距離が両者の中間
であることに起因しています。ダイヤモンドは硬度や熱伝導率の点で非常に優れた材料ですが、
人工的に合成する場合には大掛かりな装置を用いて高温高圧下の環境をつくり出す必要がある
ためコストがかかってしまいます。これに対して炭化ケイ素結晶は容易に合成することが可能で、
19世紀には既に工業的に大量生産されていたほどです。シリコンカーバイドの原料である炭素や
ケイ素は地球上に無尽蔵に存在する元素でトン単位で大量に生産されています。